【書籍レビュー】Team Topologies

【書籍レビュー】Team Topologies

Clock Icon2022.01.15

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CX事業本部 内製化支援グループの阿部です。

先日、翻訳を担当されたみなさんが所属しているアトラクタさんの書籍プレゼント企画に当選したのでTeam Topologiesを読みましたので紹介したいと思います。以下全て、私の理解に基づくものであることをご承知おきいただいた上でお読みいただければ幸いです。

どんな本なのか?

本書は、高速なデリバリーを実現することを目的として、チームの基本的なタイプとインタラクションのパターンに基づいて変化に適応するためのモデルについて記したものです。前書きに「シンプルに保つことは理想だが、成功しているシステムがそうとは限らない」という旨のことが書いてあり、複雑性は増える前提としているのが興味深かったです。これは、シンプルにしてはいけない、というよりはシンプルさと価値を天秤にかけてはいけない(価値を優先させろ)、ということだと理解しました。

組織を作っていくときの基本戦略は、

  • ビジネスフロー(価値の提供まで)を基本にしたチーム構成
  • チームで継続的に提供し続けられる一貫したスキルセットを維持する
  • 価値を提供するチームをサポートするために他のチームタイプが存在する

となります。ただし、これは一時的なものではなく、ビジネスの変化(及び進化)に伴って変化するものであると理解する必要があります。本書は「トポロジー(位相幾何学)」と名付けている通り、その変化まで捉えようとしたものです。

なお、本書を読む上では、以下の知識があるとより理解が進みやすくなると思います。

  • コンウェイの法則(とその利用パターンとしての逆コンウェイの法則)
  • ドメインモデリングの知識

コンウェイの法則とその影響については前提知識として追う部分が大きいため、かなりのページ数を説明や事例紹介に割いていますので、事前に参考文献などを探して読み込む必要まではありません。

ここから先で少し本書の内容に触れてみたいと思います。

チームの基本的なタイプとインタラクションパターン

本書ではチームの基本的なタイプを4つに、インタラクションのパターンを3つにわけ、その組み合わせを基本的なツールセットとしています。

チームの形は

  • ストリームアラインドチーム:価値提供のストリームを担当するチーム
  • イネイブリングチーム:プラクティスや技術などをストリームアラインドチームが使えるように支援するチーム
  • プラットフォームチーム:ストリームアラインドチーム向けに内部サービスを提供するチーム
  • コンプリケイテッド・サブシステムチーム:専門性の高い(動画処理コーデック、数理モデルなど)サブシステムの開発や提供を行うチーム

の四つです。ストリームアラインドチームを価値提供の中心に据えて、この流れを支えるための形式で構成されているのがわかるかと思います。

そのチームの形式に加えて、チーム同士のインタラクションのあり方を三つに分けて表現します。

  • コラボレーション:他チームと密接に協力して働く。境界線は曖昧になる
  • X-as-a-Service:責任境界を明確にして働く
  • ファシリテーション:一つのチームが別のチームを積極的にファシリテーション、コーチする

インタラクションのあり方はチームの形式と組み合わせで固定になるわけではなく、チームの認知負荷やビジネスドメインの理解度からくるチーム分割の精度によって使い分けることになります。

チームファーストで作る

上記のような形式を組み合わせて、ドメインやビジネスフローの理想的なあり方に基づいた組織を作っていくわけですが、

  • 組織の力学はチーム間、メンバー間の仕事の仕方(引いてはアウトプットとしてのアプリケーションのあり方)に影響する
  • その影響力は組織から受ける、という一方通行ではない
  • であれば逆方向で利用することができる

というコンウェイの法則の逆方向からの適用を考え方のベースにしています。

組織の変化

組織の形は固定的なものである必要はありません。ビジネスドメインの進化や組織の練度の向上に伴って、大きさも形式もコラボレーションの仕方に変化が出てきます。

本書ではその変化のきっかけにも触れています。紹介されているきっかけは以下です。

  • 1チームで扱うにはソフトウェアが大きくなりすぎている
  • デリバリーのリズムが遅くなり始めている
  • 複数の業務サービスが大量の下位サービス群に依存している

また、チーム間のコラボレーションに違和感が発生する時も見直すきっかけとなるようです。

所感

通して読んでみて、「非常にシンプルな指針に貫かれた本」だな、と思いました。また、練度はともかくとして、真似しやすい形に落とし込まれていると思います。紹介されているツールセットも明確で、共通言語としていくところから始めても有用だな、と感じました。私の現在の仕事を進める上でもハマるポイントはありそうです。

また、紹介されている事例やロジックも、私の拙い経験の中でも実感として非常に説得力がありました。

ちなみに、組織設計はオブジェクト指向設計と似ているのでは?という発想は昨年あたりふと思いついたことがありましたが、こうやって書籍の形で理論武装までしてまとまっているものに触れると、「自分が思いつく程度のことはやっぱり誰かが思いついてるよなあ」と再認識するきっかけになりました。

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